最近注目の通信技術の一つ、RFIDタグをご存知でしょうか。
まあ”最近注目”といっても、RFIDの技術自体は今や当たり前に使われているICカードなどにも使われています。
直接触れなくても情報の読み取りができるという観点ではバーコードが類似技術だと思いますが、
ICカードってバーコードのように直接光を決まったエリアに当てなくても全方向から読み取ってくれるし、後から情報を書き換えたりもできます。また実は複数同時に読み取れるという点も重要なメリットです。(改札等ではエラーになるように設定されていますが)
ただ、バーコードみたいに何でもかんでも貼ろうとすると高かったんですよね。
それが近年は技術の進歩もあり、このRFIDをバーコードのようにタグとして使われるケースが増えてきています。
今回はそんなRFIDタグの現在の応用事例についてのご紹介。
RFIDタグの応用事例(最初期):セキュリティーゲート
初期におけるタグとしてのRFIDの用途はどうもセキュリティの観点での使われ方だったようです。
タグが貼ってあれば警告が鳴るゲート、よくDVDのレンタルショップなどでもありますよね。
確かに非接触で、障害物があっても全方向から読み取りができる利便性を活かしたものですが、あくまで0か1かの識別をしているだけとも言えますね。
ただ、同じ発想で人や物の出入りを管理するシステムは現在も使われています。
一例ですが、このようなものです。(マイティキューブ株式会社のシステムです)
もちろん簡単に出ていけるという利便性もありますし、逆に患者さんとかが勝手に外に出ていかないようにセキュリティゲートとして機能させることもできますよね。
RFIDタグの応用事例(初期):図書館の蔵書
バーコードの代替という観点では、これが最初の本格的な導入事例なのではないでしょうか。
図書館って、元々は貸出表みたいのが貼ってあって、手書きで処理していたものがいつの間にかバーコード処理に置き換わっていたものですよね。
それだけでも確かに革新的だったとは思うのですが、それでも一個一個処理しないといけません。
しかも図書館では本を高いところにも積んだりするものなので、期末の棚卸しなどは大変だったと思います。
これにRFIDタグを貼るとどういうことができるかというと、
・カゴの中の本全てをまとめて 貸出/返却 処理とかもできる
・本棚から降ろさなくてもサーっと電波を当てることでその本が棚に有るか無いかわかる。(棚卸しが楽でしょうね)
もちろんこれに加えて、セキュリティゲートを置いておけば、貸出中ではない本が通過した時にアラートを出すこともできます。
このようにRFIDの機能を存分に発揮できる場所だったわけですが、以下のような理由で導入のハードルが低かったことも初期に図書館で導入された一因と考えられます。
図書館で早々にRFIDを導入できた要因1:動作環境における技術的障壁が比較的低い
RFIDは電波を使う特性上、水や金属があると感度が落ちてしまいます。
それに対して図書館というのは木の棚の中にたくさんの紙でできた本が山ほどあるだけです。
つまり、とてもRFIDを使うのに都合の良い環境だったと言えます。
図書館で早々にRFIDを導入できた要因2:一回の読み取りあたりの利用コストが低い
今現在もそうですが、RFIDの大きな課題の一つはそのコストの高さです。
最近では大量生産すれば一枚数円というところまでコストは落ちてきていますが、昔は安くても一枚100円以上が当たり前という世界です。
そのタグを例えばコンビニの菓子パン一つ一つに貼り付けて行ったら、いくらレジが無人になり人件費が浮こうとももちろん商売になりませんよね。
それに対し、図書館の蔵書だとどうでしょう?
まず、消耗品と違って本自体が何度も何度も繰り返し使われるものなので、RFIDタグも一回貼れば相当な回数使用されます。
さらに、
・貸出返却の簡易化
・セキュリティゲート
・棚卸し
と、一枚のタグが活躍する場が幅広いと言えます。
他にも国が協力したなどの要因もありますが、確かにRFIDタグをビジネスとして適用するにはうってつけだったように感じます。
RFIDタグの応用事例(近年):アパレル製品(物流から店舗まで)
近年のRFIDタグの応用例として有名なのはアパレル業界のユニクロではないでしょうか。
アパレルも本と同じく、比較的水分や金属が少なく、RFIDを使いやすい製品ですよね。(実は女性用の服でよくあるラメの装飾が大敵だとか)
ユニクロの業態はSPAといって、製造から販売まで行う業態です。
この場合、製造部門でRFIDを貼っておくと図書館の例と同様に沢山活躍の場があってとても有利です。
もちろん店舗の棚卸しなどの在庫管理が楽になったり、レジを無人化できたりというメリットもあるのですが、
店頭に並ぶ前の段階(製造・物流)でも様々な処理手続きがあります。そこも簡略化することができるとなれば、コストが高いと言っても十分な成果を得られるわけです。
また、販売する製品のタグにRFIDタグが埋め込まれているメリットはもう一つあって、商品一個一個が、どのような物流を辿って店頭まで並んでいるのか追跡が容易になることです。
これは例えば製造に問題があったことがわかり、リコールが必要となった際に、問題となった製造部門発の製品のみをリコールすれば良いことになり非常に効率的になります。
ユニクロ以外にもGU等も有名ですね。
アパレルの枠を外してSPA業態として考えるとニトリ等もそうですが、まだRFIDを用いた無人レジの話は聞かないですね。
ただ、間違いなくこれからどんどん増えていくと思います。
RFIDタグの応用事例(近未来):コンビニ
回転寿司のお皿だったり、輸血管理だったり、ロボット倉庫だったり、まだまだRFIDが使われているところはありますが、際限がないので最後に近未来のお話です。
実は経産省がコンビニでもRFIDを使おうとしていて、こんな宣言を出しています。
コンビニの商品までRFIDに置き換わったらいよいよバーコードってどこで使うんだろうって感じですね。
バーコードの強みはコストと、既に普及しているインフラの量ですが、ここまできたらRFID一択になっているかもしれません。
問題はやはりコストです。
コンビニの商品につけるなら相当安くしなくてはならず、経産省も一枚あたり一円以下という一つの指標を掲げています。
ただ、個人的には絶対無理ではないと思いますね。
半導体は安く大容量になる一方ですし、最近ではprinted electronicsの分野も徐々に頭角を現してきています。
バーコードと同じように大量に印刷できるようになったりすれば、いよいよバーコードは絶滅するかもわかりません。
15年後、バーコードの存在は今でいうフロッピーディスクみたいなものになっているかも。。。
RFIDの原理まで知りたい方は理系とーくまで
今回はビジネスのテーマとして書きましたが、RFIDタグの原理については理系とーくの方でまとめました。
実はRFIDタグと一口にいっても色んな種類のものがあるんですよ。
それぞれ原理がわかれば強み弱みももっと明瞭に見えてくるものなので興味がある方はぜひこちらもどうぞ
おわり:既にRFIDにはたくさんの応用事例と実績がある
このように既にRFIDは相性の良い場所ではしっかり活かされています。
ビジネスに導入できるかどうかというのは提供できる価値がコストに見合うかどうかにかかってくるわけですので、
一枚のタグが大きな価値を発揮するところから導入されてきています。
それに対し、どんどんコストは安くなってきており、今後はますますコストに見合う適用対象は増えてくるはずです。
バーコードと比べるとメリットは明白ですので、そのうちほぼ完全に置き換わるでしょうね。