GWも過ぎるとそろそろ日焼けが気になる季節です。
休日にしょっちゅうテニスをする僕は既に焼けてきました。毎年毎年アホほど焼けてきたので他人より気にしない性質ではあるんですが、もう若くもないのでちゃんと対策した方が良いのかもとか思うこの頃です。
そこで薬局に行き日焼け止めをいくつか手にとってみたのですが、その時に思ったのが、
「なんだよSPFとかPAって・・・」
まあSPF50+とか、PA++++が明らかに強そうなのはわかったけども、
普通に「遮断率95%以上!」とかでよくない??
世のマダムには段階評価の方がわかりやすいのだろうか。
わかりにくくても「効果ありそう」と思わせられれば良いということなのだろうか。
なんにせよ気持ちが悪いので化粧品の研究をしている知り合いにも聞いて色々調べました。
そしてせっかくなので、大元の「光」の部分からわかるようにまとめてみましたのでどうぞ。
前提1:紫外線という固有の光があるわけではない。あくまで光の分類を指している言葉。
この辺は人によって常識かもしれませんが、そもそも一口に紫外線といっても一種類じゃないんですよね。「紫外線」っていう決まった光線があるわけじゃないんです。というか、無限に種類があります。みんな違ってみんないい状態。お肌にはみんな悪いけど。(でも有効的にも使われるんですよ。歯医者さんの虫歯を薬で埋めた後に固める光とかね)
そもそも「紫外線」って言葉は、言って見れば「テストの合計点が400点より高い学生」とか「背が150 cmより低い子」とかと同じ程度の表現です。ざっくりとある集団の属性を示した言葉ってわけですね。
もちろん「150 cmより背が低い」と言ったって149 cmの高校生と125 cmの小学生じゃ全然別物ですよね。その間にも135 cmの子だったり、136 cmの子だったり、無数の背の低い子が分類されます。
同じように紫外線の中にもとびっきり紫外線なやつもいれば紫外線の端くれみたいなやつがいますし、紫外線も同じ構文「〇〇が△△より□□な光」と表現できるわけですが、それは「波長が400 nmより短い光」です。(若干分野ごとに波長の値は違う場合があります)
実は学術的に考えたことがなければ、光っていうと目に見える明るい光と、せいぜい紫外線、赤外線くらいに思われるかもしれませんが、僕にとっては他にもラジオで使われているラジオ波だとか、よく放射能で話題になるX線だとかも同じ類と捉えています。
なぜならそれらはどれも電磁波という波の一種で、違うのは波長だけだからです。
ただ、紫外線、可視光線、赤外線が光としてよく一括りに認知されるのは、太陽光がこの辺の波長域の電磁波だからでしょうね。
この中で波長が400〜780 nmくらいの電磁波の事が一般的に目で光と感じるもので、僕たちは可視光と呼んでいます。
この波長の光は人の目の中の分子の構造を変化させる力を持っているんですよね。その力で目の中で反応が起き、人は色を感じています。
続いてそれより長い波長の光は赤外光で、普通目には見えません。
この波長の光は水だとかの分子をnmよりも小さいスケールで振動させる力があります。実はこのプルプル震える強さが「温度」の正体だったりします。なので遠赤外線を浴びるとあったまるわけです。
最後に、紫外線。先述の通り、400 nm以下の光です。
この波長の光は、ざっくりといえば分子を破壊する力を持っています。破壊というよりは変化という感じですが。。。幼児に粘土で遊ばせているような状態です。引きちぎったり、別の粘土とがしゃ!って合体させたり。なんにせよ原型からは程遠い状態になるわけです。
これが身体の皮膚の中で組織を壊してしまうのが日焼けで、シミだとかしわに繋がるというわけですね。
前提2:物は各波長ごとにどれだけ光を反射するか吸収するか決まっている
この辺は「物が何色に見えますか?」というのと関わってくる話なのですが、ディスプレイのような暗い部屋でも見えるものを除いて、身の回りの物がなんでそういう形状・色で見えているのかといえば表面で光を反射しているからです。
そして物ごとにどの波長の光を吸収、透過、反射させるかというのが違うんですね。これを分光特性が異なるといいます。
例1、りんごの赤
例えば、りんごは赤色の光を表面で反射し、それ以外の光を吸収します。透けていないので少なくとも可視光の領域で透過成分はないですね。
その結果りんご表面から反射された赤色の光のみを感じることになります。
(いやーりんごの絵上手いなぁ)
これは言い換えると、りんごというのはおよそ波長が700 nm以上の光を反射するものだということです。
例2、赤シート
もう一例。暗記するときの赤シートってありますよね。シートをかぶせると文字が消えるやつ。
もともと教科書には
何も書いてない白い部分
シートをかぶせても消えない黒文字の部分
シートをかぶせると消える赤文字部分で構成されています。
白い部分というのは全ての色の光を反射している部分です。
逆に黒い部分はそこで光が吸収されてしまって目に光が来ない部分、そして赤色部分は赤色の光だけ反射している部分です(りんごと同じですね。)
一方、赤シートは赤色以外の光を吸収する素材になっています。なのでそのシートを通してみるとみんな赤に見えて、あとはその光の強さの情報しか残らないわけですね。
ここで元の紙面にシートを乗せるとどうなるのかみてみると、こうなります。
まずはどんな光も赤シートを通すと赤色の波長の光だけ抜けて紙面に当たります。
その後を書く部分ごとまとめてみると、
黒文字部分:黒文字で全て光は吸収される。目まで光は届かないので「黒」
空白部分:光は全て反射するが、もともと赤シートで赤色の光だけに絞られるため、目に届く光も「赤」
赤文字部分:赤色の光だけ反射する。(りんごと同じ)シートを通ってきた赤色の光を反射するので「赤」
つまり、赤シートをかぶせると消えるのは、空白部分と赤文字部分で、目まで抜けてくる光が同じ「赤」になるからです。
さらに言うと、赤シートで抜けてくる赤と、赤文字の赤が人間の目で見分けがつかないほど同じ、
つまり、「波長」までほぼ同じ赤だからこそ、赤文字部分が背景の空白部分に紛れて消えるわけです。
言い換えると、例えば赤シートと赤文字がそれぞれ波長700 nmと750 nmだったら、両方赤色ではありますが、それぞれ少し違った色味に感じてしまいます。
赤シートを透過する赤も赤文字が反射する赤も、どちらも「同じ波長の赤」だからこそ成り立っているんですね。
・・・とまあここまで前座です。
まとめると、
1、紫外光といっても波長はそれぞれ異なる
2、各物質ごと分光特性(どの波長をどの程度反射、吸収、透過するか)を持っている。
これを抑えた上で日焼け止めについて見てみましょう。
日焼け止めの原理:肌の上で光を吸収、反射
日焼け止めも言ってみれば肌の上にシートを載せているようなものですよね。
塗ったクリームの層ができています。
そしてそこに紫外線が来ると・・・?
このように紫外線を吸収したり表面で反射したりするようになっています。
先ほどのりんごは赤色を反射していたり、赤シートは赤色以外の光を吸収していたように、
日焼け止めは紫外線を反射したり吸収することで、その奥にある肌には紫外線が届かないようにしてくれているわけです。ありがたい。
どんな紫外線に対しても同じように作用するの・・・?
ここまで丁寧に読んでいただけた方はここまでのロジックの隙間にお気づきでしょうか。
前提1、紫外光といっても波長はそれぞれ異なる
前提2、各物質ごと分光特性(どの波長をどの程度反射、吸収、透過するか)を持っている。
それなら、何か一種類日焼け止めを塗っても、ある紫外線は良くカットしてくれるけど、ある紫外線はダダ漏れだったりするんじゃないのか??
完全にその通りです。
紫外光をもう少し細かく分類すると三つに分けられる
まず、実は紫外光も大きく分けて三つに分けられています。
315 nm~400 nmのUV-A
280 nm~315 nmのUV-B
100 nm~280 nmのUV-C
単純なネーミングですね・・・。
このうち、三つ目のUV-Cはオゾン層がほとんど吸収してくれるのでほとんど地上には降り注ぎませんので対策を講じる必要性が低いです。
問題はUV-AとUV-Bです。
この二つは波長が異なっていて、それに伴い性質も少し異なります。
その違いとは・・・の前に。
性質を理解するために、この二つの原則を持っておくといいです。
原則1:波長が短いほど高エネルギー
原則2:波長が長いほど散乱しにくい
原則1は前提1でお話しした赤外光とかの話と結びつけるとわかりやすいですね。例えば赤外光は分子をプルプル振動させる力くらいしかないのに対し、波長の短い紫外光は分子を破壊するほどのエネルギーがあるんでした。これはもちろん同じ紫外光同士を比べても同様です。
原則2は、ラジオ波の例を知ると覚えやすいですね。ラジオ波はとても長い波長の光です。そしてラジオ波ってとおーーーくまでまっすぐ届かないといけないですよね。
なので散乱しにくい(途中で散ってしまわない)長い波長のラジオ波が通信に使われるわけです。
この前提を抑えた上でUV-A、UV-Bの違いです。まず波長の短いUV-Bから。
UV-B:非常に高エネルギー
はじめにUV-B。こちらはUV-Aと比べると短波長です。
原則1を考えてみてください。肌の中でメラニンと反応しまくりシミになります。
高エネルギーなので、普通に考えてUV-Aより危険なんですよね。昔から特にこちらは重要視されていました。
UV-A:肌の奥まで届いてしまう
じゃあUV-Aはしょぼいか・・・?
いやいや、ゆーても紫外光のはしくれなので肌の中で悪さはします。
その上、肌の奥まで浸透する性質があります。これは大きな要因としては二つ考えられます。
一つは原則2、散乱しにくいのでまっすぐ肌の奥まで進むからです。
もう一つは肌の中の成分がより短波長の光ほど吸収しやすいので、比較的吸収されにくいUV-Aは奥の方まで生き残ります。
なんにせよ肌の奥でくすみを作り、透明感を失わせてしまうようです。
もう一点、実はUV-Bはガラスで遮断されますが、UV-Aは遮断されません。それはガラスがそのような分光特性になっているためです。
なので窓際での日焼けはUV-Aの仕業ですね。
日焼け止めによってUV-AとUV-Bの分光特性は異なる
ここで先ほどの疑問に戻りましょう。
「何か一種類日焼け止めを塗っても、ある紫外線は良くカットしてくれるけど、ある紫外線はダダ漏れだったりするんじゃないのか??」
つまり、UV-Aの波長をカットできてもUV-Bの波長はカットできなかったり、その逆もまた然りだったりするわけです。
そこでそこで、お待ちかね、SPFとPAの指標の登場です。
SPF→UV-Bのカット性能、PA→UV-Aのカット性能
SPFとPA、どちらも日焼け止めの性能を示す指標ですが、
大きな違いは紫外光のうち、UV-BとUV-Aのどちらを対象としているかです。
結局、「この製品は紫外光何%カットです〜」って言うには、紫外光のくくりが広すぎるんでしょうね。
SPF(Sun Protection Factor)とは
SPFはUV-Bからどれだけ守ってくれますかという指標です。
具体的にはSPF30、SPF50というように、数字で表されます。
この数字は、日焼けするまでの時間を◯◯倍遅らせることができますという数字です。
なので、SPF30なら普通20分で日焼けするシーンであれば20×30=600分まで耐えられるようになりますよ、という数字で、
SPF50+は50倍以上という最高評価です。
PA(protection grade of UVA)とは
一方PAはUV-Aからどれだけ守ってくれますかという指標になります。
こちらは
PA+
PA++
PA+++
PA++++
の4段階で、+が多いほど優秀です。
ですがSPFのようにあまり定量的な指標とはなっていないようです。
正直これは、いよいよ「なるべく良いやつにしよう・・・」と考えるしかなさそうですよね。
あまり消費者目線じゃない気もしますが、化粧品開発の知人によればPA++程度でも普通にその辺買い物行くくらいならばっちしだそうですよ。
注意点:やや多めに塗った条件での試験になっている
一点注意点があります。特にSPFの方で注意が必要です。SPF50なんて普段20分日焼けにかかるなら1000分守れることになりますからね、無敵そうですけど、
落とし穴はありそうです。
それは、この試験はどちらかと言うと普通の使い方よりは多めに塗った条件で試験しているようです。
こちらにSPFの試験概要があります。
ローションなどであれば30cm^2に15滴です。
5x6 cmのサイズに15滴
例えばアイフォン7は高さ14 cm弱、幅7 cm弱です。
なので、だいたい画面の下半分くらいに15滴くらいですかね。
・・・両腕と顔塗ろうと思ったら200滴くらい必要になっちゃいません!?笑
というわけで、本当に50倍も日焼けしにくくなるのかと言われれば、普通の使い方ではそうはならないと思いますので、
「SPF10でよくね?」と思って使ってみたら普通に日焼けした・・・となるかもしれません。それはもちろん多く塗った方が効果はでますから。
おわり:紫外光にも種類がある。それぞれに対する性能の指標がSPFとPA
前提で記した内容が理解できているとSPF、PAに対しても「ふ〜ん」以上のことがわかって良いのではないでしょうか。
例えば毎日窓際で作業しているのであればガラスを透過するUV-Aから守ってくれるPAを重視したりとか、ピンポイントな対策ができると思います。
日焼け止めってやっぱり重要で、日傘とか帽子では日差しの角度によっては守れない太陽光まで守ってくれます。
特に曇りの日は注意で、日焼け止めの重要度高いです。
https://rikei-talk.com/wr006-cloudy_uv/
最後に。
一つ思ったのは、あまり厳密ではないですよね、この業界。
今後はますます消費者もこうやって情報を手にする機会は増えるので、単なるイメージ戦略だけではなくてごまかさず性能を示すことが化粧品会社にとっても販売力につながるのではなかろうかと思いますね。